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バーバーババ 2

10月


夜の間に台風が去って、夏が終わった。
弱っていた木の葉は全部落ちて、元気なものだけがまだしがみついている。
誰も踏んでいない地面は、木の葉とどんぐりの模様になっている。
枝の隙間から、すっきりとした濃い水色の空が見えて、
小さな森は、すっかり明るくなった。

バーバー馬場はといえば、
灰色のペンキのドアの内側に、「閉店中」の札が下がったままだ。
そのドアや窓のガラスには白いカーテンがかかり、
中は暗く、様子をうかがうことはできないが、
人の気配がしないので、きっと誰もいないのだろう。

無口な主人は、どこへ行ってしまったのだろう。
店の奥のドアの向こうに住んでいるはずが、
昨夜は夜になっても、いちども灯が点かなかった。
いま、家の中からは水の音ひとつしない。
森の空気はひんやりと冷たく、静かだった。

遠い空では、台風の腕が放つ、風がまだうなっている。
どこかで新築の家を建てる、電動のこぎりの音が聞こえる。
小学校の給食の煙が、白く立ち上っている。
近くの道路を酒屋の軽トラックが、カタカタと音をたてて通り過ぎる。
水色の空が映っている森の水たまりの上を、つなぎとんぼが飛んでいた。


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バーバーババ

バーバーババ


森の中に、バーバー馬場という床屋さんがあった。
小さな森なので、近くの小学校の子供たちの声が、よく聞こえる。
夏のプール、春の運動会。
けれどもどちらも終わった今、森はまいにち静かなものだった。

バーバー馬場の主人は、寡黙な人物だった。
おしゃべりな床屋に疲れた男たちが、
ここには常連として通って来ている。
ここへ来るお客さんは誰ひとり、主人の声を聞いたことがなかった。

そんな静かな森の中の床屋。
今日は朝からひとりしか、お客さんが来なかった。
太陽は西に傾き、ひぐらしが鳴いている。
主人は早々に掃除を済ませ、店の外でコーヒーを飲んでいた。

ふと見ると、窓の外にからませてあるしおれた朝顔の葉の陰、
開いた窓のサッシのレールに、赤とんぼがとまっていた。
とんぼはついっと飛びたつと、ふわりと降りてきて、
主人の頭にそっととまった。

けれども彼は、気づかない。
とんぼを頭に乗せたまま、一口しずかにコーヒーをすする。
とんぼの羽が、きらきら光る。
森の木々のすきまから見える、小学校の屋根に、赤い夕陽が沈んだ。


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